技能実習制度の現状と注意点


行政書士の西森です。今回は、技能実習制度についてお話をさせていただきます。
技能実習制度は、発展途上国の人々が日本で技能を習得し、それを母国の経済発展に役立てることを目的とした制度です。この制度により、多くの外国人が建設業、農業、製造業などの分野で実務を通じて技術や知識を学ぶ機会を得ています。

技能実習の特徴

  1. 目的 技能実習制度は、あくまで技術移転を目的としており、労働力の確保を目的としたものではありません。そのため、技能実習生が従事する業務は、単純労働ではなく、技能や技術の習得を伴うものでなければなりません。
  2. 期間 技能実習は原則として1年間ですが、技能実習2号・3号への移行要件を満たすことで、最長5年間まで延長可能です。延長には日本語能力や技能試験の合格が求められます。
  3. 対象職種 現在、受け入れ可能な職種は82職種156作業(2024年現在)にわたり、建設業、農業、食品製造業、介護などが含まれます。これらは法務省および厚生労働省によって定められ、随時見直しが行われています。
  4. 受け入れ体制 技能実習には以下の2つのタイプがあります:
    • 企業単独型: 受け入れ企業が直接技能実習生を招き、自社内で教育を行います。
    • 監理団体型: 監理団体(非営利団体)が技能実習生を受け入れ、企業に紹介します。この場合、監理団体が受け入れプロセスや実習の監督を行います。

留意点

技能実習制度を利用するにあたっては、以下の点に注意が必要です:

  1. 契約内容の確認 技能実習生と受け入れ企業の間で締結される契約書には、業務内容、労働条件、報酬、福利厚生について明確に記載されている必要があります。契約書は技能実習生の母国語で提供することが望ましいです。
  2. 適切な支援の提供
    • 生活支援: 技能実習生の生活基盤を整えるため、日本語教育や生活指導を提供します。
    • 相談窓口の設置: 技能実習生が職場や生活で困った場合に相談できる体制を整える必要があります。
  3. 法令遵守 技能実習制度は厳格な法的規制のもとに運用されています。受け入れ企業や監理団体は、実習計画の作成や報告義務を適切に履行しなければなりません。
  4. 文化や宗教への配慮 技能実習生の文化や宗教的背景を尊重し、業務や生活環境に配慮することが重要です。

技能実習生の活躍事例

  1. 農業分野での活躍 ベトナムから来日した技能実習生が日本の農業技術を学び、母国で有機農業を推進する企業を設立しました。この技能実習生は、野菜の栽培技術や土壌改良の知識を持ち帰り、地域社会に新しい雇用を生み出しています。
  2. 建設業における貢献 ミャンマー出身の技能実習生が日本で建設技術を習得し、母国でインフラ整備プロジェクトを支援しています。特に橋梁建設の技術を活用し、地域の交通インフラの向上に寄与しました。
  3. 食品製造業での経験 フィリピンから来た技能実習生が日本の食品製造工場で衛生管理や品質管理を学びました。この経験をもとに母国で食品加工ビジネスを立ち上げ、現地の産業発展に貢献しています。
  4. 介護分野での役割 インドネシアの技能実習生が日本の介護施設で高齢者ケアの実務を習得し、母国で介護教育プログラムを開始しました。これにより、地域での介護スキルの向上に大きく寄与しています。
  5. 製造業における成功事例 中国出身の技能実習生が日本の製造業で高度な加工技術を学び、母国で精密機械の製造会社を設立しました。彼の会社は、日本で学んだ技術を活かし、高品質な製品を海外市場にも供給しています。

まとめ

技能実習制度は、日本と発展途上国の双方にとって有益な制度であり、適切に運用することでその効果を最大化できます。技能実習生が日本で得た知識や技術を母国で活かし、経済や社会の発展に寄与している事例は多数あります。行政書士として、法令遵守や適切な支援体制の構築をサポートし、公正で円滑な技能実習制度の運用を支援して参ります。
また、実際に技能実習生の在留資格を取得されたい方や、技能実習生を迎えたいという企業様がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。

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